歯周組織の治癒の点ではどちらにも差がないと思われます 超音波は一般的に治療の短縮化ならびにクリーニング中の不快症状が少ないが使用する場所によっては手用が効果的な場合もあります
月別アーカイブ: 2024年7月
歯周病は薬で治るの?
歯周病は歯垢中の細菌の感染により引き起こされる慢性の炎症性疾患です したがって
「抗菌薬は有効なのではないか?」
といった考え方が出てくるのは当然のことだと思われます しかしここで考えなければいけないのは、歯垢が
「バイオフィルム」
という構造をもっている事です
バイオフィルムは細菌の集団が固体(歯)に付着しているもので、この中の細菌は細菌単体で存在している場合と比較して、抗菌薬に対して数百倍も抵抗性が増えると考えられています
ということは、抗菌薬ではバイオフィルム内の細菌を駆逐することは困難ということになります
したがって抗菌薬は徹底的なクリーニングを行ってバイオフィルムの構造を破壊すると同時に投薬しないと効果は期待できないと言うことになります
歯周病の歯を残すと、隣の歯も歯周病が進行する?
昔から
「歯周病が進行している歯は抜いたほうが隣の歯のために良い」
との考え方があり、そこから
「歯周病が進行したら骨が無くなるので、早く抜歯してインプラントをいれた方が良い」
との考え方にもつながってます
しかし、歯周病が進行した歯を放置した場合はある程度影響を及ぼすかもしれないが、歯周治療およびプラークコントロールを主体としたメインテナンスが行われている限り、隣の歯の歯周組織に影響を与えないと考えられます したがって、
「インプラントをいれるための早目の抜歯」
が正しいとは言えなくなってきています
糖尿病の人は歯周病が治らない?
確かに糖尿病は歯周病のリスクファクターであり、歯周病を悪化させる要因です また治療に対する反応も、健康な方に比べて悪いのではないかととも思われます
特にコントロール不良の糖尿病は、歯周炎を悪化させたり歯周病治療の反応を悪くする可能性があります 実際に疫学的には歯周炎と糖尿病の関連性を示唆したものが多いです
糖尿病は歯周炎のリスクファクターで、特にコントロール不良な場合は歯周病の悪化と関係しますが、厳密なプラークコントロールの徹底を主体とした歯周治療により、健常者と同様に治癒すると考えられます 重要なのは、やはり徹底した動機付けとプラークコントロールであると言えるでしょう
近年は歯周病をコントロールすることにより糖尿病が改善するとの考え方もあり、このようなトピックも動機付けに利用すると有効かもしれません
急速破壊性歯周炎と慢性歯周炎の鑑別は重要?
急速破壊性歯周炎であっても慢性歯周炎であっても基本的な治療方針に違いはなく、これらを細菌学的あるいは免疫学的に鑑別する意義はほとんどないと考えられます
唾液や血液の検査は歯周病の検査として有効?
歯周病は患者さんそれぞれのなりやすさも重要ですが、歯によって、さらに歯の場所によっても進行状態が異なる病気です すなわち、進行する場所と進行しない場所があり、さらに進行した場合でも、その程度は場所により様々です
したがって患者さん個々の検査ではなく、部位ごとの状態を調べる必要があります
唾液や血液の検査は患者さん個々の事しかわからないため、臨床で行う必要性は今のところ見つかりません
歯周病は細菌が原因なので細菌検査が必要?
口の中の常在菌は900種にも及ぶと言われ、その多くは未知の細菌です
その中で歯周病の原因と言われている数種類の細菌がいますが、その存在により歯周病を進行させる予測をすることは困難です
また検査にかかる時間や操作の煩雑性などを考えると、細菌検査は必要な検査とは言えません